寝静まった家々とは対照的に田んぼでは蛙の声があちこちから聞こえてくる。
すべてのものが青白く照らし出され、透明になる。

ふと、ムンクの「声」という絵が浮かんだ。
そして「銀の匙」の一節。
『ある晩私たちは肘掛け窓のところに並んで百日紅の葉ごしにさす月の光をあびながら歌をうたってゐた。そときなにげなく窓から垂れてゐる自分の腕をみたところ、我ながら見とれるほどに美しく、透きとほるやうに蒼白くみえた。それはお月様のほんの一時のいたづらであつたが、もしこれがほんとならば と頼もしいやうな気がして
「こら。こんなに綺麗にみえる」といつてお慧ちやんの前へ腕をだした。
「まあ」
さういひながら戀人は袖をまくつて
「あたしだって」
といつて見せた。しなやかな腕が蝋石みたいにみえる。』
自分の手はどうだろうかと見ていると近くでキツネがケーンと鳴いた。

妖怪人間ベム
帰り、濃霧が道の向こうから押し寄せてきた。
雨の境目がわかるように、霧の境目もわかるものだと実感。





