前回の記事で猫の習性について猫DesuのPekokoさんとやりとりしていて、思い出したことがあったので書いてみる。以前札幌で借家住まいをしていた。
大家さんは農家で、貸家6軒と自宅で囲むように畑を作りアスパラなどを栽培していた。
当然自分が借りている家も畑に面している。
間に小さな庭と農機具などを置く納屋があったのだが。
その小さな庭は以前から近在をねぐらとする猫たちの通り道だったらしく、頻繁に顔を合わせる。
庭に花壇を作り花などを植えていたので、猫に荒らされたりオシッコをかけられるのが厭で、ホームセンターで猫の嫌いな匂いがするスプレーやら、ペットボトルに水を入れたものを置くなどしてみたが効果はなかった。
しばらくして顔なじみになった一匹の猫に気まぐれにえさを与えてしまったことから物語は始まる。
その猫の名を「しっぽ」と言う。
体が黒く、鼻のまわりから腹にかけて白くなっていて、足首も白い。こういう猫も三毛とかトラといったふうに呼び方があるんだろうけども、寡聞にして知らない。
「しっぽ」の由縁だが、しっぽが白かったからというわけではない。
白いどころか真っ赤だったのである。
犬とけんかしたものかあるいは車にひかれたのか、しっぽの先がちぎれ、肉が赤く露出し、見ていても大変痛々しかった。
座るときにはしっぽの落ち着き場所がないようで、気を抜くとしっぽが地面に付き、ぴくんとなったように持ち上げる。いいかげん覚えたら良さそうなものだが、何度も繰り返す。
しまいには傷口に土が付きそれを舐め取るから、傷口の乾く暇がないようだった。
しばらくして見ると幾分乾いたようではあったが、その部分が気になるようで(人間で言うと、かさぶたになって、そこが痛がゆい感じか)噛むようになった。
するとせっかく皮が張りかけた部分にまた血がにじんで、元の赤いしっぽに戻ってしまう。それが2年くらい続いたか。
「しっぽ」には「ちくわ」と名付けられた既に成猫となっている娘がいて、同じような模様をしている。
しかしこの親子、普段は仲がよいのだが食事になるといつも親の勝ちである。
横からねだるように顔を近づけるとフーっと一喝される。
それで餌はなるべく同量当たるように分けて「しっぽ」から離して投げてやるのだが、「ちくわ」は「しっぽ」が食べているものだけが食べ物と思っているのか、「しっぽ」が場所を空けるまで横でおとなしく待っている。しかし「しっぽ」が顔をなめ毛繕いをしている頃には当然餌はなくなっている。餌があったであろう場所の匂いをかぎ、なめることしかできない。
その場を離れた「しっぽ」は目聡く「ちくわ」用の餌を見つけ食べてしまい、二度目の毛繕い。
こうでなければ野良猫は生き延びることが出来ないのかもしれない。
太宰ではないが、子より親が大事。
翌年「しっぽ」がまた子を産み、その子供たちを連れてくるようになった。
「ちくわ」は叔母さんになり、よく面倒を見ていた。
自分が食べている最中に子猫が顔を突っ込んでくると場所を譲り、食べるのを見ている。元来が優しい性格であったのだろう。幾分野良猫としての資質に欠ける嫌いはあるがそれも致し方ない。
次の年には二人とも出産。
「ちくわ」の子供(写真)は家の中にまで入るようになっていた。
もっとも親の方もこちらの隙をうかがってたまに入り込んでいたのだが。
数年たち、ある日ふっつりと「しっぽ」が姿を消してしまった。
今までにも数日姿を現さないときもあったから心配はしていなかったのだが、それが一週間となり、半月ともなるとこちらでも諦めがつくようになった。
野良猫の寿命は短いと聞いていたから、「あぁ、しっぽも寿命か、それとも事故にあったか」と考えた。
それでも「ちくわ」は相変わらず来ていたし、その子供たちも親にまとわりつき走り回っていたから、寂しくはなかった。
今でもあの辺には「しっぽ」の子孫たちがたくましく生きているのだろう。





